西東京市の高校受験塾【都立自校作成対策】
進学塾キャラベル

2026.10.13

中3Aクラス

社会

財政政策、金融政策の授業

本日の授業。

最初にビートルズの『Hey Jude』を使って、リスニングの復習をしたあと、後半では都立過去問を利用して公民の要点解説をしました。

授業では、不況のときの経済政策について話したのですが、授業後に、ある生徒から質問を受けました。

生徒からの質問

生徒「不況のときに減税するの理屈がどうも納得いきません。将来が不安で貯金に回されるのではないでしょうか。むしろ増税して、国が国民にお金を配り直した方がいいのではないですか。」

なかなか鋭い質問です。

教科書的には、不況のときには減税を行い、景気の回復を目指すと学びます。

減税による景気回復の流れ

減税する
↓
税金が安くなるので手元に残るお金が増える
↓
すると、買い物や外食などに使うお金が増え、企業の売上が伸びる
↓
企業の生産や雇用も増え、景気が回復する

という理屈です。

1.減税しても、貯金に回るだけでは?

例えば、政府が減税を行い、ある家庭の手元に1万円多く残るようになったとします。

この1万円をどう使うかは、人によって違います。

ある人は、家族で外食をするかもしれません。

別の人は、洋服を買うかもしれません。

一方で、銀行に預けて貯金する人もいるでしょう。

つまり、減税をすれば、必ず消費が増えるというわけではないのです。

2019年に話題になった「老後2000万円問題」も、老後に対する不安要因の一つです。

減税によってお金が増えても、将来が心配だから使わずに貯めておこう。

そう考える人が多ければ、期待したほど消費は増えず、景気刺激の効果も小さくなる可能性があります。

なお、銀行に預けられたお金は、銀行を通じて企業への貸し出しなどに活用されることもあります。貯金がすべて経済に役立たないという意味ではありません。

ここで大切なのは、減税によって増えたお金が、どの程度、実際の消費に回るかということです。

2.増税して社会保障を充実させれば、もっとお金を使えるのでは?

もし、老後の生活や病気になったときの医療について、今よりも安心できる社会だったら、国民のお金の使い方は変わるのか。

例えば、将来の医療費や老後の生活費について不安が小さければ、「今のうちに、できるだけ貯金しておかなければ」と考える必要が少なくなるかもしれません。

その分、旅行や外食、買い物などにお金を使いやすくなる可能性があります。

スウェーデンなど、社会保障が充実している国を考えるときにも、この視点は重要です。

もちろん、スウェーデンの人々も貯金をしますし、将来への不安がまったくないわけではありません。また、消費の多さは、所得や物価、住宅事情など、さまざまな要因に左右されます。

ただ、社会保障によって将来への不安を和らげることが、消費を支える可能性があるという考え方はできます。

景気をよくするためには、単に国民の手元にお金を増やすだけでなく、国民が安心してお金を使える社会をつくることも大切なのかもしれません。

3.「増税して国が配る」は、減税より効果的なのか?

「減税しても貯金されるのなら、むしろ増税して、国から国民にお金を配った方がいいんじゃないですか?」

これも十分に考える価値のある意見です。公民で学ぶ「所得の再分配」も、こうした考え方に関係しています。

例えば、所得の高い人から税金を集め、そのお金を生活に余裕がない人に給付したらどうでしょうか。

生活に余裕がない人は、受け取ったお金を食費や日用品などに使う割合が高いかもしれません。

その結果、社会全体の消費が増える可能性があります。

このように、誰から税金を集め、誰にお金を渡すかによって、景気への影響は変わってきます。

一方で、増税には注意点もあります。

税金を負担する人の手元に残るお金は減ります。その人が買い物を控えれば、消費が減る可能性があります。

つまり、給付によって増える消費と、増税によって減る消費の両方を比較して考えなければなりません。

また、誰にいくら配るかを決め、申請を受け付け、振り込みを行うには、事務作業や時間も必要です。

したがって、減税と給付のどちらが効果的かは、単純には決められません。

4.税金を集めて配るのは、社会主義なのか?

ここで、もう一つ考えてみたいことがあります。

税金を集めて、国民に配る。

こうした政策は、社会主義的な考え方なのでしょうか。

確かに、政府が所得を再分配し、国民の生活を支えるという点では、政府の役割を重視する考え方と関係があります。

しかし、税金を集めて給付すること自体が、社会主義を意味するわけではありません。

現在の日本をはじめとする先進諸国では、自由な経済活動を基本としながらも、政府が社会保障や景気対策などを通じて経済に関与しています。このような経済体制を「修正資本主義」と呼びます。

例えば、スウェーデンのような国でも、企業や個人が市場経済の中で活動しながら、社会保障制度を通じて所得の再分配を行っています。

つまり、「増税して国民に配る政策だから、社会主義だ」と単純に決めつけることはできないのです。

5.経済的に正解の政策でも、なぜ政治家は実行できないのか?

最後に大きな問題が出てきます。仮に、増税政策が長期的には社会保障の安定につながるとしましょう。

では、政府はその政策を実行できるのかどうか、という問題が起こります。

例えば、政府が国のために増税が必要だと説明したとしても、国民にとっては負担が増えることは事実です。

その結果、国民の反発を受け、選挙で不利になる可能性があります。また、国会で内閣不信任決議案が可決されれば、内閣は総辞職するか、衆議院を解散することになります。

このように、経済的に望ましいと考えられる政策でも、政治的な事情から実行が難しくなる場合があります。

「不況のときには減税する」

この一つの知識に疑問を持つだけで、消費や貯蓄、社会保障、所得の再分配、さらには政治や選挙の問題までつながっていきます。

もちろん、受験勉強では、教科書の重要語句や基本的な仕組みを正確に覚えることが欠かせません。

しかし、疑問を持ち、自分の頭で考えることで、知識は単なる暗記ではなく、社会を理解するための道具になると思います。

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